西洋比較演劇研究会 | 日本演劇学会

西洋比較演劇研究会

研究会からのお知らせ

西洋比較演劇研究会 2022年5月 第223回例会のご案内

公開日:2022-04-26 / 更新日:2022-04-28

皆様 いかがお過ごしでしょうか。良い季候になって参りました。各種催しがリアルで再開の動きになってきています。その一方で、本会ではせっかく獲得したオンライン学会の方法を、今後もその都度の状況で、活用していく方針です。5月例会は諸般の事情からオンライン開催にしたい所存です。大変興味深い研究発表2本がそろいました。ぜひご参加ください。

  • 日時 2022年5月14日(土)19:00~22:00
  • Zoom会議方式によるオンライン開催
    • リンクは5月13日(金)に会員メールで発信します。
    • 非会員で見学を希望される方は研究会事務局まで問い合わせください(y3yamash[at]seijo.ac.jp)。2度目からは入会をお願いしています。
  • 第223回例会 
    • 研究発表(1)19:00- 20:30
    • 研究発表(2)20:30- 22:00

研究発表(1)19:00- 20:30
山口遥子「日本の「人形劇」誕生前夜 ——ドイツの芸術的人形劇との関わりを中心に」

要旨
 1894(明治27)年、ダブリンから東京浅草花やしきに来た見世物師の団体「ダアク座」が、西洋式の糸操り人形芝居というものを日本人に初めて見せた。五代目尾上菊五郎が舞台でその人形に扮したり、萩原朔太郎や芥川龍之介らが観賞記を残すなど反響を呼んだが、当時の新聞に掲載された「奇異なる音楽、美人の演舞……実に近来の一奇観」という評にも明らかなように、芝居の一種というよりは新奇な見世物と見られた。しかし1923(大正12)年、伊藤熹朔や千田是也らによる同じく西洋式糸操りの「アグラヴェーヌとセリセット」公演は対照的な反響を得る。遠山静雄邸で行われたこの小公演は翌年の『演劇新潮』で南座や牛込会館等で上演された芝居と共に震災後の「復興劇」として紹介され、他にも人形劇を実践する美術家や作家らが相次いだ。1894年〜1924年の30年の間に日本における人形劇についての理解が変化し、西洋人形劇がもはや見世物ではなくある種の舞台芸術として受け入れられるようになっていた。

 本発表では、当時の雑誌や書物に記された人形劇をめぐる言説を通じて、この変化がいかに生じたのかを考察する。1923年以前の日本の現代人形劇についてはこれまであまり論じられてこなかったが、1900年代から小山内薫や坪内逍遙らによって海外人形劇の紹介や日本伝統人形芝居の再評価が始まり、これが日本の現代人形劇成立の土台を形作ったと考えられる。特に日本の人形劇観に影響を与えたのは、当時見世物から芸術への変貌を遂げつつあったドイツの「芸術的人形劇」の潮流であると思われる。

発表者プロフィール 

山口遥子(やまぐち・ようこ)

人形劇団プーク国際部、日本学術振興会特別研究員(PD)、早稲田大学非常勤講師。東京芸術大学美術研究科博士課程修了(美学)。日本とドイツ語圏の20世紀人形劇史を研究。

研究発表(2)20:30- 22:00
渡邊麻里「歌舞伎の劇場における音声メディアの展開と解説」

要旨

 近年、舞台芸術はテクノロジーを用いた視覚や聴覚メディアの導入が増え、観客は観劇中に字幕などの視覚媒体、あるいはイヤホンを用いた聴覚媒体を介して提供される情報や解説等を利用する機会が多くなった。特に伝統芸能では、音声ガイドや字幕は現代において欠かせないものとなっており、今後もテクノロジーを利用したこれらの運用は増えていくと予想される。しかし、その導入を巡ってはこれまでも功罪が論じられ、さらにコンテンツである解説も、利用者に提供すべき最低限の知識等の検討や、質的向上のための情報共有化が進んでいないのが現状である。本発表では聴覚メディア、とりわけ音声による解説に着目し、歌舞伎の音声解説導入の背景の考察を通じて、伝統芸能における音声メディアと解説について、今後の可能性を探る。

 歌舞伎は他の伝統芸能に先立ち、劇場の観客に音声メディアによる解説が提供された二つの事例、1960年の歌舞伎初のアメリカ公演の同時通訳と、1975年の歌舞伎座の同時解説〈イヤホンガイド〉がある。しかし興味深いことに、これらは当初から舞台芸術に用いる目的で開発されたものではなく、同時通訳機器、あるいは限られたエリア内での微弱電波放送システムが考案されたのち、劇場に利用されたものである。

 19世紀の電話の発明以降、放送伝達テクノロジーが進化する中で新しい音声メディアは音楽や演劇と結びつき、劇場にいなくとも舞台や客席の音声を聴くことが可能になり、本来は劇場に在った観客が拡張していったことは既に知られている。その後20世紀になり、国際会議や国際裁判の通訳の必要性から生まれた同時通訳装置は、限られた空間内で個々のニーズに合わせて放送を提供することを可能にし、ミュージアムや劇場といった文化施設に導入され、〈ガイド〉を提供するようになる。そして、この同時通訳装置がアメリカの劇場において初めて利用されたのが、1960年の歌舞伎公演であった。

 また、日本においては1975年に歌舞伎座において同時解説〈イヤホンガイド〉が誕生するが、これは久門郁夫による限られたエリア内で放送する微弱電波の放送システムが考案され、新しい商業メディアへの利用が模索された末、歌舞伎に行き着いたものであった。歌舞伎座側も当時、歌舞伎を常打ちとする劇場でありながら観客離れが問題となっており、状況の打開策として観客の鑑賞の手助けとなる解説放送に踏み切ったのである。導入以後、〈イヤホンガイド〉は歌舞伎に定着したが、かつて映画説明やラジオ放送の音声による解説を聴く楽しみは、鑑賞の補助や新しい観客への興味をもたらし、観客の増加につながるとともに、ただ実物を見るだけよりも解説とともに楽しみたいという観客をも生み出した。こうした〈ガイド〉をも楽しむという土壌が日本にあったことも、〈イヤホンガイド〉が歌舞伎に定着した一因と考えられる。

発表者プロフィール

渡邊麻里(わたなべ・まり)

2021年 東京大学大学院博士後期課程(文化資源学)退学。2012年よりイヤホンガイド解説員(歌舞伎・文楽)。主な論考に「歌舞伎イヤホンガイドの誕生―ラジオの舞台中継放送と劇場の同時解説―」『演劇学論集 紀要72』(2021)、「一九六〇年アメリカ公演における『娘道成寺』の同時通訳」『歌舞伎 研究と批評 66号』(2021)、「歌舞伎イヤホンガイド前史―1960年アメリカ公演における同時通訳」『文化資源学 16号』(2018)がある。





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