研究会からのお知らせ
西洋比較演劇研究会 2022年度 1月例会のご案内
公開日:2022-12-16 / 更新日:2022-12-16
3年ぶりに1月例会を開催します。オンラインでお待ちいたします。
- 日時:2023年1月9日 20:00~21:30
- Zoomによるオンライン開催となります。前日にURLを会員メールで流します。
研究発表
根岸理子「マダム花子 ―国際的コラボレーションに参加した日本俳優の先駆け―」
要旨
本発表では、これまで日本における研究では未確認であった、マダム花子の主演映画La Petite Geisha(1913)の詳細を紹介するとともに、彼女への「西洋の芸術界、芸術家に影響を与えた日本俳優」という評価以外のperspectiveを示すことを目指す。
海外における催しでMadame Hanakoの名を見かけることは珍しくない。昨年も、英国のテート・モダンにおいて開催されたロダンの大回顧展「The Making of Rodin」(2021年5月18日~11月21日)で、ロダンによる花子像が多数紹介され、ドイツのフォルクヴァンク美術館で開催された「Global Groove」(2021年8月13日~11月14日)でも、花子は西洋の芸術界を活性化させたパフォーマーの一人として取り上げられた。ロダンに強いインスピレーションを与えた重要なモデルとして、また、西洋の芸術界に影響を与えた日本俳優の一人として、花子はもはや揺るぎないポジションを得ているように見える。
だが、花子が成し遂げたのはそれだけに留まらない。彼女の特異な点は、海外巡業に徹した俳優であったことと、1902年から1921年までとその在外期間が非常に長かったことである。その長期にわたる海外での活動は、ロイ・フラーをはじめ、数々のエージェントに見込まれ、契約を結べたことから可能になったものであった。そうしたエージェントの助けもあり、花子は映画出演や多国籍の俳優からなる公演への参加を重ね、日本俳優の存在を世に知らしめたのであった。
マダム花子は、グローバルに活動する日本人アーティストの草分け、国際的なコラボレーションに加わった日本俳優の先駆けと見なせるのではないだろうか。彼女は、日本の俳優も西洋の俳優に伍して活躍できるということを世界に示したのである。
発表者プロフィール
根岸理子(ねぎし・たかこ)
ロンドン大学SOAS(School of Oriental and African Studies)大学院博士課程修了。PhD。現在、東京大学教養学部教養教育高度化機構LAP特任研究員。専門は近代日本演劇。 論文・著書:「今様能狂言の芸態について」(『楽劇学』第7号、2000年3月)、「泉祐三郎一座始末記」(『武蔵野女子大学能楽資料センター紀要』No.13、2002年3月)、『20世紀の戯曲III 』(共著、社会評論社、2005年)、「マダム花子—『日本』を伝えた国際女優—」(『演劇学論集』第53号、2011年11月)、『井上ひさしの演劇』(共著、翰林書房、2012年)、『演劇のジャポニスム』(共著、森話社、2017年)、『革命伝説・宮本研の劇世界』(共著、社会評論社、2017年)、『漱石辞典』(共著、翰林書房、2017年)、『マダム花子』(論創社、2021年)他。