西洋比較演劇研究会 2022年度4月 総会・第222回例会のご案内 | 日本演劇学会

西洋比較演劇研究会

研究会からのお知らせ

西洋比較演劇研究会 2022年度4月 総会・第222回例会のご案内

公開日:2022-03-19 / 更新日:2022-03-24

 新型コロナ感染症のおかげで、学生達にとっての授業はいうまでもなく、専門家にとっても研究会の場で思うようなコミュニケーションが取れない日々が続いています。従来は質疑応答の中では言いにくいことも、そのあとの懇親会の席でなら、ニュアンスをこめて伝え合うことも可能でした(ただ、そうしたintimateなコミュニケーションに頼ることの是非もいろいろな角度から再検討されるべきかも知れません)。忘れもしませんが2017年4月、総会後の懇親会は談論風発で盛上り、30周年記念事業にむけて幸先の良いスタートを切ったことが懐かしく思い返されます。ところがその事業が完結した2020年春に新型コロナ。2年間そうした機会を奪われて、私たちの心もだいぶ干上がってしまったのかも知れません。しかし、もうあと少しの我慢です。ネガティヴなことを言うのではなく、前を向いて歩いて行きましょう。久しぶりの対面開催の予定です。コロナ禍の経験を奇貨として、遠方の会員のためにもハイブリッド方式を実験的に取り入れてみたいと思っています!お近くの方はぜひ成城大学までお越しください。

  • 日時 2022年4月16日(土)午後2時~5時
  • 会場 成城大学 311教室(3号館1F) 
    • Zoom併用によるハイブリッド方式を予定。会員向けリンクは4月15日(金)に発信。
    • 会場ではまず受付にお立ち寄りください。
    • 非会員で見学を希望される方は研究会事務局まで問い合わせください(y3yamash[at]seijo.ac.jp)。2度目からは入会をお願いしています。
  • 総会 14:00~14:50
    • 2021年度活動および会計報告、2022年度計画および予算などが議題になります。
  • 第222回例会 15:00~17:00(研究発表・質疑応答) 

研究発表 北野雅弘
「モノローグ的なインタテクスチュアリティ:ブレヒト『アンティゴネ』を中心に」

 『アンティゴネ』は、前441年に上演されて以来、再演と、さまざまな利用(アプロプリエーション)が繰り返されてきた作品であり。それぞれの時代に合わせて、独自の『アンティゴネ』が作られ続けてきた。このことは第二次大戦後とりわけ顕著であり、例えば、ウクライナ侵略に対してAICT日本センターは、ロシアとウクライナの事務局長に『アンティゴネ』を持ち出して演劇の力を信じるメッセージを送っている。

『アンティゴネ』は、神々の掟についてのクレオンの無知からの誤謬(ハマルティア)のゆえに親族(ハイモンとエウリュディケ)のパトスをもたらすアリストテレス的な悲劇だが、現代の利用では、彼女を圧政への市民的抵抗のシンボルとする「抵抗の演劇」になることが普通だ。この彼女のイメージの変更をもたらした大きな要因がブレヒトの『アンティゴネ』(1948)であることは疑いがないだろう。ブレヒト版は、ヘルダーリンによる翻訳を利用し、それに物語上の変更を加えるだけでなく、ヘルダーリンに準拠しているところでもさまざまな修正を施しているが、そうした修正はすでにヘルダーリン訳にも見出された。
 ブレヒト版はいわば二重の明示的インターテクスチュアリティを持っている。
 興味深いのは、ブレヒト版における逸脱や変更は、作品の「言語的多様性」ではなく、「モノローグ性」(バフチン)を強化する方向で一貫している点だ。このことが戦後におけるブレヒト版のモデル的重要性を高めた。
 戦後の『アンティゴネ』利用において、全く異なった傾向を示すのがアリス・アレクサンドルの『アンティゴネ』(1968)である。『アンティゴネ』を大戦後のギリシャの内戦状況に持ち込んだこの作品は複雑でポリフォニー的も言えるインターテクスチュアリティを示す。本発表は、ほとんど知られていない本作の紹介を通じて、アンティゴネの新しい利用のあり方を示したい。

発表者プロフィール

北野雅弘 群馬県立女子大元教授(2022.04.01~)

 経歴:1987 大阪大学助手文学部(文芸学)、1992群馬県立女子大学文学部美学美術史学科専任講師、1995 同助教授 2005 同教授。
 論文・翻訳等 ソフォクレス「オイディプス王」(2012『ベスト・プレイズ』) 「アンティゴネ」(2019 『ベスト・プレイズ2』)、ブレヒト「アンティゴネ」(2021-22 『群馬県立女子大学紀要』)「芸術作品の定義」(2018 同紀要)、「ギリシア悲劇と疫病」(2021、『演劇学論集 日本演劇学会紀要』(2021)。

* 参照資料を2点添付いたします。必要に応じてご持参ください。印刷したものを会場でも配布します。

  • 今後の例会予定
    •  第223回例会:2022年5月14日(土)夜(詳細は4月末にご案内します)オンライン開催
    •  発表者:山口遥子氏・渡邊麻里氏
  • 第224回例会:7月~8月上旬 パネル・ディスカッション(委員企画、調整中)
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  • 基本的に西洋演劇研究を軸としつつも、比較の観点から広く演劇現象全般を見渡すという姿勢を貫いています。国際的な意識を持って活動する国内・国外の演劇人・研究者たちを招いて、意見交換をする場も設けています。

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