西洋比較演劇研究会 11月例会のご案内 | 日本演劇学会

西洋比較演劇研究会

研究会からのお知らせ

西洋比較演劇研究会 11月例会のご案内

公開日:2022-10-26 / 更新日:2022-10-26

 はや晩秋の気配ですが、つつがなくお過ごしでしょうか。今年度、5回目の例会となります。個人研究発表と、会員の著書の合評を行います。ぜひご予定ください。

  • 日時: 2022年11月19日 14:00~17:30
  • 場所: 成城大学8号館 831教室 
    • ふだんと教室が異なります。Zoomによるオンライン方式を併設します。前日にURLを会員メールで共有します。

(1)研究発表 14:00~15:50

 松尾ひかり 「ミヒャエル・クンツェの独自性 ―ミュージカル『モーツァルト!』リブレット分析を通して-」

要旨
 本発表では、ウィーン発ミュージカルの脚本家ミヒャエル・クンツェが製作し、1999年にウィーンにて初演を迎えたミュージカル『モーツァルト!』と、2015年に同じくウィーンにて再演された同作に即して、リブレットの比較分析を通し、同時に彼が製作した他のミュージカルとの比較も行うことで、クンツェの仕事の独自性を探っていく。
 クンツェは自身が手がけるミュージカルを、既存のミュージカルジャンルには含まれない“ドラマミュージカル”と称している。この呼称は、クンツェ曰く、脚本家主体の製作物であることや、軽いエンタテインメントにとどまらない物語であること、常に問題提起を提示していることであると述べており、また先行研究では例えば渡辺諒が「音楽とドラマが拮抗するミュージカル、すなわち音楽そのもののドラマ化=ドラマそのものの音楽化」といえるのではないだろうかという解釈をあげている。これらの解釈は、スコット・マクミリンが提唱しているブロードウェイ・ミュージカルのドラマ概念において、厳密には音楽(歌)とテクスト(プロット)は同一化なされていないという論からは逸脱しているように思える。
 また、一般にクンツェの手がけるミュージカルの特徴として、他国での上演に際して各地の事情に即した演出の変更を許容することは知られている。さらに、クンツェは自身の本拠地であるウィーンでの再演においても、各地で行われた変化の過程をある程度加味した新しいリブレットを書き、演出に修正を加えている様子もみてとれる。そもそも、ミュージカルの舞台表現は総合的なものであることは言うまでもなく、脚本家の内的な理由のみで作品に変更が加えられるわけではない。そのため、今後の展望として、テクストのみの検討だけでなく、渡辺が指摘するように、音楽も含んだドラマだとして総合的に検討することも必要であろう。
 しかしながら、脚本家主体で製作されたミュージカルにおいて、クンツェの改編されていく複数のリブレットに注目することは、彼が観客に提供しようとしている「物語」や「問題提起」に関する思考の過程を読み取ることは可能なのではないだろうか。
 現在、先行研究において例えば作品1点のみに重点をおいたリブレット分析、その中で作品の改編について、内容の変化についての言及は見られるが、このようなリブレット比較分析は取り組まれていないように思う。そのため、この分析比較を通して、クンツェが手がけるミュージカルの新たな独自性を見出したい。

発表者プロフィール

松尾ひかり(まつお・ひかり)
明治大学大学院文学研究科演劇学専攻博士後期課程所属。ウィーン発ミュージカルの脚本家ミヒャエル・クンツェにおける作品研究を行っている。

(2)合評会 16:10~17:30

 大崎さやの著 『啓蒙期イタリアの演劇改革 ゴルドーニの場合』(東京藝術大学出版会、2022年3月)

 コメンテーター 鈴木国男
 *冒頭、短い導入を行うことを大崎氏にお願いしていますが、できるだけ事前に読んで参加されることを期待いたします。

著者・コメンテーター プロフィール

大崎さやの(おおさき・さやの)
専門はイタリア文学・イタリア演劇。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得満期退学。博士(文学)。現在、東京藝術大学、東京大学、明治大学、法政大学、東京音楽大学、早稲田大学、放送大学にて非常勤講師。主要業績:著訳書に、『啓蒙期イタリアの演劇改革 ―ゴルドーニの場合』(東京藝術大学出版会、2022年)、『演劇と音楽』(共著、森話社、2020年)、『ベスト・プレイズⅡ ―西洋古典戯曲13選』(共訳・共著、論創社、2020年)、『西洋演劇論アンソロジー』(共訳・共著、月曜社、2019年)他。論文に、「ゴルドーニの『スタティーラ』 ―演劇改革の萌芽」(地中海学研究、第45号、2022年)、「イタリア近代演劇と上演空間 ―ヴェネツィアの劇場とゴルドーニ」(日本18世紀学会年報、2021年、第36号)、「ゴルドーニとオペラ・セーリア―メタスタージオ作品との関係を中心に」(東京藝術大学音楽学部紀要、2019年、第44号)、「ルイージ・リッコボーニの『演技術について』 ―イタリアにおける演技論の伝統を背景に」(演劇学論集、第67号、2019年)他。

鈴木国男(すずき・くにお)
共立女子大学文芸学部教授。イタリア演劇・歌劇研究。ゴルドーニ「二人の主人を一度に持つと」翻訳・解説(『ベストプレイズⅡ』 論創社、2020年)、『イタリア・宝塚・2.5次元』(春風社、2020年)、「宝塚歌劇におけるベートーヴェン」(『共立女子大学文芸学部紀要第68集』2022年1月)、「新たな観客を生む「2.5次元ミュージカル」というシステム」(『国際演劇年鑑2022』)、「ワールドワイド・オブ・タカラヅカ」(インタビュー)(『歌劇』 宝塚クリエイティブアーツ、2022年9月号)。

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  • 基本的に西洋演劇研究を軸としつつも、比較の観点から広く演劇現象全般を見渡すという姿勢を貫いています。国際的な意識を持って活動する国内・国外の演劇人・研究者たちを招いて、意見交換をする場も設けています。

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