デジタル化の波に伸るか反るか | 日本演劇学会

デジタル化の波に伸るか反るか

公開日:2022-05-09 / 更新日:2022-07-04

 

大林のり子(明治大学)

 いち読者として、この「学会コラム」では、今後、会員のみなさまの多様な研究の視点を反映したコラムも読ませていただけることを期待しているのですが、この新公式ホームページの公開が昨年10月で、その他の新しい会員サービスを開始してから、ようやく半年を過ぎたところです。 

 数ヶ月前、広報情報委員会の担当者から、まずは「学会コラム」のスタートアップとして、リニューアルに関与した私にもひとつ何か書いてもらえないだろうか?と、お声がけいただいたのですが、はてどのような立場から書いたらよいものかと思案しました。たとえば「学会コラム」の役割が今後どのようになっていくのか、その第一歩として、いち研究者の視点からなにか現在を見渡すような話題提供をした方がよいのかもしれない、あるいは、学会運営にこれまで関わってきた立場から、組織運営について考えていることなどを書いておくべきなのだろうか、云々と。

 そうこうして、この「学会コラム」が、従来、学会員宛てに郵送されていた「会報」での巻頭言や研究フォーラム、事務局だよりとは、大きく性質が異なっていることにも思いを巡らせました。当然のことながら、ホームページは、学会員のみならず、広く読まれるものとして、まだ学会員ではない方々、入会を検討されている方々、さらには、そもそも演劇学会とはいったい何をやっている団体なのかと、ふと立ち寄られる方なども含む、さまざまな読者がいらっしゃると思います。昨今、SNSなどでは、自宅の一室にてつぶやかれた私的な言葉が、公共の場において違った形で受けとめられ、時に「炎上」するといった現象も社会問題となって久しく、そうしたことを考えれば、この「学会コラム」もなにかこれまでとは違った交流の場になっていくであろうことが予感されます。いわば開かれたものとしての学会の有り様なども探っていくことになるのでしょうか。

 しかしながら、今回は、この場をお借りして、今一度、事務局の立場から会員のみなさまへという、閉じた内容でコラムをお届けしますこと、どうかご容赦ください。事務局に届く問い合わせ内容などをみておりますと、まだ広報がいくらか不足しているように思われます。以下、きわめて事務的な内容になりますが、諸事の確認をお願いいたします。

 まずは、昨年度より、学会から会員に宛てた通知方法が一部変わっています。

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(1)学会からの通知

 〇郵送(会費納入のお願い、和文紀要(6月と12月)
 〇一斉メール(基本は年2回:大会案内と研究集会の参加要領など)

 下記の学会名簿に登録されているメールアドレス宛に
 日本演劇学会会員係(maf-jstr@mynavi.jp)から配信されます。

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 一斉メールは、大会・研究集会の参加要領をはじめ、主に締切期限がある情報について配信しています。随時、公式ホームページやSNSで、最新情報を発信しておりますので、メールを見逃した場合にも、ホームページ等でご確認いただければと思います。 

 また、メール配信の内容は、次項の「会員マイページ」にも掲載しています。あわせてご活用ください。

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(2)「会員マイページ」のご利用(会員限定サービス)

 〇各会員のログイン情報が必要です。(昨年8月に郵送で通知)
 機能・設定の概要は、こちらをご覧ください。(MyPageStartup2022.pdf

 〇オンライン学会名簿をご活用ください。
 掲載情報、公開設定など、各自で内容確認・更新をお願いします。

 〇事務局からのお知らせ 
 会員限定の情報公開(現在は総会・理事会議事録、一斉メール配信履歴など)

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 この「会員マイページ」でご確認いただける各会員の登録内容は、学会として会員同士を繋ぐ大切な情報をお預かりするものです。学会事務局から会員へ宛てた情報の送付先にもなりますが、学会員同士の交流や情報交換の促進にも役立てていただければ幸いです。

 さて、せっかくの機会をいただいたので、デジタル化を進めた裏方の立場から、もうすこしだけ語らせてください。

 明治大学で2014年に事務局を引き受けてから8年になりますが、その間も、いくつかの部分でデジタル化を進めてまいりました。様々な世代が一同に集まる学会という場、そしてさらに演劇学会は、演劇という研究対象自体が総合的で社会的な存在であることから、さまざまな超領域的な専門家の集まりでもあります。それぞれの会員が、果たして新しいシステムに容易になじめるかどうか、活用をしてもらえるだろうか、そうしたことを常に理事会や事務局で検討しながら導入を進めてきました。

 そもそも事務的な業務は効率化すべきところが多く、かつ研究成果の公開などもむしろデジタル化を進めて情報にアクセスしやすくしていくことが近年求められています。一方で、歴史研究に関わる私自身の立場では、時に、デジタル化されていない一次資料に触れ、その古びた表紙の風合い、活き活きとした筆跡や紙質などから感じ取られる時代を読み取り、ささやかな発見をしていくこともあります。

 すでに学会紀要は和文・英文ともにJ-Stageを通して会員の論文が広くオンライン上に公開されるようになりました。それは国際的なネットワークの中で検索され読まれる機会が得られるということです。他方、私自身は、バックナンバーのデジタル化の作業の中で、何年も前の諸先生の論文を再度読み直す機会をいただき、学会の研究活動の地層をあらためて感じることもありました。加えて、実のところ、和文紀要については、冊子も発行しており、オンラインでは見られない部分も残されています。バックナンバーには、興味深い座談の記録や大会報告、そして古い冊子には名簿などが掲載されているものもあり、その時々の学会活動の息づかいを感じ取ることができます。

 そうしてみると、事務局としてデジタル化の流れにのる船頭を務めながらも、基本的に私自身はアナログ的な感覚に拠った人間なのだとあらためて実感します。たとえば、論文など精緻な文章はやはり誌面で読まなければきちんと頭に入らない。それ自体は、昭和世代ということで片付けられてしまうのかもしれないけれど、やはり本や雑誌は原本を手に取ってみて気がつくことも沢山あるという感覚が、これまでの私の研究の姿勢に繋がっているように思います。

 コロナ禍を経て、ますます増えている舞台やイベントの映像配信についても、貴重な舞台や遠方の舞台に触れられるという大きなメリットがあることは言うまでもありません。しかしオンライン動画での観劇は、家の雑事が邪魔をして集中できない、という些末な要因もありますが、そもそも私自身が演劇に求めていることのひとつに、デジタル化されていない部分、たとえば劇場に座った時に見える観客や客席、天井につるされた照明器具、あちらこちらから聞こえる音、裏方スタッフの動きや息づかいなどまでも含んだ、劇場に漂ういろいろなものにあるからだろうと思っています。

 今後もデジタル化の波はどんどん進み利便性も高まっていく一方で、そこからこぼれ落ちているものにも意識を向けられるような、そんな視点を今後も持ち続けていかなければと、あらためて実感しているところです。

(大林のり子)

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