日本演劇学会ハラスメント防止ガイドライン(案) | 日本演劇学会

日本演劇学会ハラスメント防止ガイドライン(案)

ハラスメントへの対応

公開日:2024-06-25 / 更新日:2024-07-02

 

ハラスメント防止ガイドラインについて

日本演劇学会コンプライアンス・ワーキンググループ(現・コンプライアンス委員会)では、学会内のハラスメント対策について検討を重ね、2023年の「ハラスメント防止宣言」に続き、「ハラスメント防止ガイドライン(案)」を策定しました。

これは、2024年6月に改正された日本演劇学会規約第4章第5条に基づいて、具体的にはどのようにハラスメントに対応していこうとしているかを記したものです。

また、これはコンプライアンス・ワーキンググループという限られた会員の間で議論した結果を、あくまでも案として公開するものです。会員の皆さまにはぜひ内容をご確認の上、ご意見をいただきたいと思います。ご意見の投稿はこちらから。メールでもお受けいたします。

2024年12月1日に予定されている理事会の承認を得て、同12月2日から運用を開始する予定です。2024年11月17日までにいただいたご意見は、この理事会への提出に反映させます。

日本演劇学会ハラスメント防止ガイドライン(案)

(PDFファイルは以下からダウンロードできます。)

2024.5.19改訂

1.ガイドラインの目的

 日本演劇学会(以下、本学会)は、「日本演劇学会ハラスメント防止宣言」に基づき、学会活動におけるさまざまなハラスメントを防止し、本学会員と関係する人々の権利と尊厳を守り、各自が安全かつ快適に学会活動に参加できるよう、本ガイドラインを定める。

2. 基本方針

本学会は、「演劇またはこれに関連ある諸部門の研究ならびにその成果の公表に資する」という本学会の設立目的に則し活動する学術団体として、すべての会員の安全と尊厳を脅かすあらゆる人権侵害、ハラスメントを容認しない。これを基本的精神として、すべての会員が協力し、いかなるハラスメントも発生しない環境づくりを目指す。また、ハラスメントが生じている懸念があると判断される場合、すみやかかつ的確に事態を把握して、対処を行なう。ただし、行為を行った者への攻撃や排斥を目的とするものではない。

3.ガイドラインの適用範囲

本ガイドラインは、全国大会、研究集会、および、分科会の活動、ならびに理事会、各委員会や事務局の活動、紀要の編集活動、学会ウェブサイト利用上の行為など、原則として、会員同士もしくは会員とこれに関わる人々との間で生じた、学会活動におけるあらゆる行為(SNSも含む)について適用される。また、上記の学会活動に関わるものであれば、本学会員同士のみならず、本学会員が非会員の人や組織に対して行なった行為、また、非会員の人や組織が本学会員に対して行なった行為についても適用される。

4.定義

ハラスメントとは、修学・教育・研究上や職務上の、あるいは性別、人種、民族、国籍、宗教、思想、年齢、性的指向、性同一性、外見、身体的特徴、障害の有無など人がもつさまざまな属性に基づく当事者間の力関係の非対称を濫用して、本学会員とそれに関係する人々の権利や尊厳を脅かし、公正かつ安全な教育・研究・労働環境を損なう行為や言動を指す。これらの行為には、対面の場のみならず、手紙や電話、メールやソーシャルメディアの発言も含まれる。また、非対称の力関係がどのような当事者間の関係においても、行為者の悪意の有無にかかわらず、認定される場合がある。

5.事例

⑴ レイシャル・ハラスメント

レイシャル・ハラスメントとは、民族的出自、肌の色、人種、国籍、宗教、思想・信条などを理由として生じるハラスメントである。たとえば、以下のようなものがある。

①人種、民族、国籍、信条に関連した攻撃的で侮蔑的言動。

②身体的、文化的な特徴や行動様式に対する揶揄やからかい、差別的な言動、人種や民族的出自の多様性を無視した前提の言動。

③本人の意思を無視した、人種的・民族的属性の公表。

⑵ セクシュアル・ハラスメント

セクシュアル・ハラスメントとは、相手方の意に反する性的な発言や行為、また、性別や性的指向、性同一性などに関する発言や行為によって生じるハラスメントである。たとえば、以下のようなものがある。

①性的な役割分担を強制する、性差別的な考えを公然と主張して周囲に脅威を感じさせるなどの性差別的な言動。

②性的少数者に関わる差別的言動(その人の性的指向や性自認を人前で暴露する、からかう、等) 。

③相手の性的な事項やプライバシーに関する過干渉及び公表。

④身体に接触する、極度に接近するなど、相手に脅威を与える性的身体行動。

⑶ アカデミック・ハラスメント

アカデミック・ハラスメントとは、教育・研究上の力関係を濫用することによって生じるハラスメントである。たとえば、以下のようなものがある。

①学会発表などに対する妨害(研究発表における質疑応答の際、相手方の研究者としての人格や研究能力を不当に傷つける言動、等)。

②賞への評価、研究評価に関る事項での不当な取り扱い(論文査読を公平に行わない、等) 。

③相手方の権利に対する侵害(好適な役職に就くのを妨害する、等) 。

④研究上の上下関係を利用した研究に関わりのない貢献の強要。

⑤上記に関連して、SNS上で、誤った情報に基づき特定の研究成果を貶める発言を繰り返し行う、またその拡散に加担。

⑷ パワー・ハラスメント

パワー・ハラスメントとは、職務上の優越的な地位や権限、または人間関係などの優位性を利用して行なう言動によって生じるハラスメントである。たとえば、以下のようなものがある。

①ハラスメント防止の根幹そのものを否定する発言(「昔はよかった」「堅苦しい」、等)。

②相手方の個人情報や平穏な生活を侵すような個の侵害(個人情報を勝手に流布する、出身や学歴、性別等、業務と無関係なことを非難、等)。

③アルコールを飲めない・飲まない人への配慮を欠いた言動や行動。

④誹謗中傷や過度の叱責等による精神的な攻撃(同僚などの前で、無能扱いする言葉を浴びせる、等)。

6.ハラスメント対処の枠組みと手続き

コンプライアンス委員会の内に、ハラスメントに関わる諸問題に対処する枠組みとして、

(1) ハラスメント対策部­(以下、対策部)を設け、

(2) (1)を構成するハラスメント対策部員を配置し、

(3) (2)はハラスメント相談窓口担当(以下、窓口担当)およびハラスメント調査員(以下、調査員)を担うこととする。

コンプライアンス委員長(以下、委員長)は会長が理事から任命し、委員長は対策部員を選び、理事会の承認を得る。

ハラスメント相談窓口(以下、窓口)は、常時、日本演劇学会ウェブサイトに設置されている。

調査員については、対策部から複数名選ばれる。事案によっては学会外の専門家も加えることができる。

(1)ハラスメントの申し立て

1) 申立人は、随時、窓口を通してハラスメントの訴えを行うことができる。また、申立人から依頼を受けた代理人による訴えも可能である。窓口担当は、学会事務局から独立した連絡先(メールアドレス、ウェブ上の入力フォーム等)を確保し、事務局を経由せずに申立てが可能となるようにする(申立の方法の詳細は学会ウェブサイトに掲載し、会員向けにも広報を積極的に行う)。申立を受けた窓口担当は、対策部で情報を共有し、対策部は申立人の同意を得た上で、速やかに調査員に調査の依頼を行う。調査員は秘密裡に申立人に聴取を行い、申立文書の提出を受ける。

2) 申立人は、調査の円滑な遂行のため、ハラスメントに関する証拠となりうる諸資料を準備し、その後も、適宜補充を行う。申立文書提出の際に、申立人はそうした資料を可能かつ必要と認められる範囲で添付することが求められる。

3) 申立人は、希望すれば、申立活動に関わる様々の助言を対策部から得ることができる。

4) ハラスメントを受けた当人ないしその代理人以外の者による申立、並びに実名を明らかにしない申立は、原則として受理しない。

(2)ハラスメント対策部の作業

対策部は、ハラスメントに関して、普段から、その防止対策、またガイドライン改訂について、適宜、理事会への提言・提案を行い、さらに、申立を受けた際には、調査員へ速やかに依頼を行った上で、以下の諸作業を遂行する。

1) 申立開始以降、調査期間中、さらに処分決定までにわたる、申立人の人権と会員としての権利の保護のための諸サポートを行う。

2) 申立てられた側(以下、被申立人)の人権と会員としての権利についても、その不当な侵害を防ぎ、調査の公平性が保たれるようサポートする。このとき、このメンバーの人権とプライバシーについても対策部は十分な配慮を行う。

3) 調査員の報告を受けて、ハラスメントの認定を行うと同時に、その結果を原案として取りまとめた上で可能な限り速やかに理事会に報告する。

(3)調査の実施

1) 調査員は、学会外の専門家を含むことができる他、場合によっては専門家の助言を仰ぐこともできる。

2) 調査員が行う調査と、その結果の報告については、申立人の人権を保護し、二次被害を防がねばならない。申立人が窓口、対策部、調査員、理事会等から不当な処遇を受けたと判断した場合は、会長、又は、委員長に申立てることができる。

3) 被申立人側の人権やプライバシーも、調査の過程で尊重され、調査に対する異議申立の権利も保障される。

4) 調査員は、両者の主張や提出された証拠を公正に考慮して、何が行われたか (行われなかったか)についての事実認定を行い、事実と認定された行為や言動が(1)相手に対して、身体的または精神的な不快、苦痛、脅威、傷害、不利益等を与えたか、(2)これにより相手の人権と尊厳を侵害したか、(3)教育・研究その他本学会員の適正な活動環境を悪化させたかを判断する。

5) 調査の過程で申立人と被申立人の間で調停が成立した場合は、調査委員会は調査を終了することができる。その場合も調査委員会は経緯を対策部に報告するものとする。対策部はそれを妥当と認めた場合、速やかに理事会に報告する。

6) 被申立人が、調査員による事実関係調査のための主張書面提出・関係証拠提出・聞き取り調査のための面談等の要請に正当な理由なく応じなかった場合、調査員は申立人の主張を事実と看做して手続を進めることができる。

(4)処分

1) 被申立人が会員であって、対策部が、ハラスメントが為されたと認めた場合、理事会は、対策部の報告に基づき、当該事案における諸事情・当該事案における被害の程度・当該事案の重大性・事案発生後の対処状況・被害者の処罰感情・行為者の前歴等諸般の事情を勘案の上、以下のいずれかの処分を科すことができる。

①戒告又は譴責

②会員の一部資格停止(大会など学会活動の場への参加停止)

③退会勧告

④会員の全資格停止(除名)

2) 被申立人が会員でなく、ハラスメントが為されたと認められた場合、 理事会は諸般の事情を勘案の上、以下の対応を行うことができる。

①戒告又は譴責、場合によって被申立人の所属先への連絡

3)ハラスメント行為が認定され、処分を受けた会員が、理事会の決定に不服のある場合には、処分の通知から1ヶ月以内であれば、異議申し立てを行うことができる。異議申立について、対策部は速やかに新たな調査員を指名し、再調査を行うものとする。

4) 本学会は、調査の過程と処分の結果については、何らかの特別な理由により理事会が公表の必要性を認めた場合を除き、一切情報開示を行わない。ただし、ハラスメント行為が認定され、処分を受けた後、会員が所属する機関から要請があった場合には、理事会は異議申立期間の終了後に当該機関に対して報告書を交付することができる。そのような情報共有を行う場合には、申立人と処分を受けた側双方の人権とプライバシーに配慮して適切な情報管理を行うよう、所属機関側に事前に確認を行う。ただし、この情報共有の件はかなりデリケートな問題であるので、理事会において幾重にも慎重に検討して対応することとする。それゆえ、場合によっては、申立人および処分を受けた者双方のプライバシーに関わることとして、所属機関への情報開示を断ることもできる。

5) 対策部は、調査員から調査結果が理事会に出され、理事会で処分が決定された後、申立人の円滑な学会復帰のための諸支援を適切に行う。

7.さいごに

以上のとおり、ハラスメントへの取り組みに当たり、本学会は次の諸事項を固く遵守する。

1) ハラスメント相談窓口、ハラスメント対策部、ハラスメント調査員、理事会(以下、関連諸機関)は、すべての関係者のプライバシーを保護し、秘密を厳守するとともに、処分結果についても、公表すべき特別な理由があると理事会が判断した場合を除き、一切情報開示を行わない。

2) 関連諸機関は、申立人の人権と会員としての権利への配慮を徹底し、調査の過程を通じてその保護に努めるとともに、申立人への結果報告も適切に行った上で、会員活動への円滑な復帰も十分にサポートする。もしも申立者が関連諸機関から不当と思われる対処を受けた場合は、申立人は、は対策部に対して随時苦情を申し立てることができる。 あわせて、被申立人側の人権の保護に十分配慮し、調査結果に対する異議申し立ての権利も保障する。

3) 対策部は、ハラスメントの防止、ガイドラインの充実に努め、理事会に提言・提案を行う。

以 上

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