研究会からのお知らせ
西洋比較演劇研究会 2023年10月 第231回例会のご案内
公開日:2023-10-06 / 更新日:2023-10-06
長い猛暑から解放されてがらっと秋模様となりました。10月例会はZoomによるオンライン開催とさせていただきます。ふるってご参加ください。
- 日時:2023年10月21日(土)16:00-17:30
- 会場:オンライン
- *Zoomによるオンライン開催となります。前日にZoom情報を会員メールでお知らせします。20日夕刻までに届いている様子がない場合は、niinuma★art.tamagawa.ac.jp(★を@に代えて)までお問い合わせください。
研究発表
塩田典子「唐十郎におけるサルトルの影響――河原者の遠征と襲来――」
発表要旨
本研究は、1960-70年代の唐十郎におけるフランスの哲学者サルトル(1905-80)の影響を明らかにすることにより、アングラ演劇の実像を明確に捉え直すことを目的とする。唐は当時流布していたサルトルの用語《状況》から命名した状況劇場を1963年に旗揚げし、「特権的肉体論」をサルトルの小説『嘔吐』の「特権的状況」という用語から想を得て執筆した。
扇田昭彦は『唐十郎全作品集』(1979-80)の解題、『唐十郎の劇世界』(2007)等において同時代の劇評、社会背景とともに深く、網羅的に作品を論じており、樋口良澄は『唐十郎論』(2012)において唐十郎の旗揚げ当初から2000年代に至るまでの作品分析を俳優の肉体を通じて論じた研究を行なった。1960年代の日本におけるサルトルは若者の必読書の一つであったとサルトル研究者の澤田直は述べているように、1960年代はブレヒト、ベケット等海外の演劇人の影響を強く受けた世代であるが、海外の演劇、思想から自らの演劇を作り上げた受容の観点からのアングラ演劇研究はいまだ十分ではない。
本研究では唐十郎の初期作品に焦点を当てサルトルの影響を考察する。哲学者であるサルトルは戯曲、小説、評論を執筆した多面的な活動で知られているが、《状況[situation]》、《参加[engagement]》はサルトルの哲学、芸術でも根幹をなす重要な概念である。まず、「特権的肉体論」を俳優論と演劇論の観点から考察を行い、唐十郎の初期戯曲である『腰巻お仙 忘却編』の分析とともに検証する。本研究は、この作業を通じてサルトルを受容することから作り上げた唐十郎独自の《状況》への《参加》概念を明らかにし、アングラ演劇の中でも非政治的と呼ばれた唐十郎の新たな魅力を提示するものである。
- 発表者プロフィール
- 塩田典子(しおた のりこ)
- 東京大学大学院表象文化論コース博士課程。J=P•サルトルと日本現代演劇研究。早稲田大学大学院にて三島由紀夫『サド侯爵夫人』におけるG・バタイユの受容研究、東京都立大学大学院にてJ=P•サルトルの初期戯曲と演劇論、『存在と無』の研究を行う。