2023年度日本演劇学会全国大会を振り返って | 日本演劇学会

2023年度日本演劇学会全国大会を振り返って

公開日:2024-02-01 / 更新日:2024-02-01

 

林 公子(2023年度全国大会実行委員長)

 近畿大学での2023年度全国大会は、前年度の多摩美術大学での感動的な対面での大会、日本大学での対面ならではの研究集会に引き続き、対面での開催が実現しました。新型コロナウイルス(COVID-19)が5類感染症となってからすでに半年以上たった現在では、学会が対面で行われることはもちろん、懇親会の実施も当たり前のことと感じられるようになりましたが、2022年9月上旬に学会サイトに発表募集を公開した時点では、念のために、「オンライン開催になる可能性もあります。」という断りを載せました。開催校の近畿大学では次年度の対面での学会開催許可は年度末まですべて保留になっていました。まだまだ不安を抱えてのスタートでした。

 大会で前夜祭を行うことは当初から決めていましたが、実は懇親会は行わないつもりでした。大会の時期が果たしてどんな状況になっているか不透明だったからです。しかし、コロナの5類移行の見込みも濃厚となってきた3月の企画委員会で、小菅会長から、是非、懇親会復活の方向で検討してほしいという要望が出され、実施の方向で企画を進めることになりました。開催校では4月末に、コロナの5類移行と同時に学内施設での懇親会受付を再開するとのアナウンスがありました。受付再開後に問い合わせた時点で早くもかなり予約が埋まっていて、正直、焦りました。誰もがこの時を待っていたのだと改めて思ったことでした。

 さて、今回の大会テーマ「歴史と演劇」はちょっと大風呂敷かな?とも思いましたが、演劇学会ではこの10年以上、歴史を正面からテーマにした大会や研究集会が行われていなかったので、大きく構えて、今日までの歴史と演劇、演劇研究との切り結びの有り様が、多様な会員の研究発表から立ち現れる大会にできたらと考え、このテーマにいたしました。 

 蓋を開けると、非常に幅広い分野から多くの会員が発表に応募くださいました。また、大会への参加者は140名を超え、前夜祭参加者40名、懇親会出席者も大会参加者の半数に迫り、学会員がフルスペック(?)の大会開催を心待ちにされていたことがひしひしと感じられました。開催校として、いろいろ行き届かなかったところや、少なからずアクシデントもあり、ご参加下さったみなさまの熱い思いに十分応えられなかった点もあったと思います。この場を借りてお詫びいたします。

 私自身は、司会を務めた開催校企画の前夜祭と基調講演以外はほぼ発表会場外にいたため、残念ながら、それぞれの発表においての歴史と演劇との切り結びの様相を直接うかがうことはできなかったのですが、会員がそれぞれに歴史と演劇について改めて考えを巡らせ、今後の研究成果に結実させる契機となれば、大会の意義は果たせたと言えるのではないか思っております。。

 大会がオンライン開催から対面開催に“戻った”とはいえ、現在、私たちがおそらく日々感じているように、一度オンライン・メディア化の波をくぐった社会が以前に“戻る”ことはないといってよいでしょう。今大会でも、オンライン開催での発見や経験、2021年の学会サイト・リニューアルと共に開始されたデジタル化が活かされました。発表要旨が大会参加募集の案内とともに学会サイト上に公開されるのは、2021年度の名城大学でのオンライン開催からで、以来、すでに定着しているのはご承知のとおりです。また、広報情報委員会は大会開催の様子をX(旧ツイッター)でリアルタイムに伝えて下さり、大会2日目に思わぬアクシデントによってタイムスケジュールに変更が生じた際も、すばやくXに変更情報を上げてくださいました。一方で、コロナ以前に“戻した”こともありました。発表資料はオンラインからのダウンロードではなく、紙媒体での配布にしたのですが、資料を収めたクラウドストレージのQR コードを配布された発表者がありました。実は大会実行委員会はこの形式を予想しておらず、必要な対応ができていなかったため、司会者や会場のみなさまにご迷惑をかけてしまいました。発表資料のQRコード配布では、配布資料をストレスなく読み取る機器が必要となりますが、カラーの資料を配付することも可能です。今後の大会・研究集会におけるメディア、デジタル化の利用については、継続的な検討の必要があると思いますが、上手く活かせば、大会・研究集会の準備作業面の合理化にも寄与するでしょう。

 実際の演劇の世界も例外ではなく、例えば公演の有料アーカイブ配信は次第に定着しつつあるように思います。こうして歴史の変遷とともに“演劇”も変容していく。いつの時代も私たちは「歴史と演劇」の有り様の目撃者であることを再認識した大会でもあったように思います。 最後に、このような変化の渦中での大会開催を共に担い、遂行してくださった大会実行委員の阪本洋三先生、梅山いつき先生、笠井友仁先生、そして当日スタッフのみなさんに深く感謝申し上げます。

  • 学会コラム「Theatre / Studies」

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