学会の新しい試み | 日本演劇学会

学会の新しい試み

公開日:2021-12-01 / 更新日:2021-12-02

 

永田靖(大阪大学・日本演劇学会会長)

 すでにお伝えしておりますように、日本演劇学会では会員の皆さんへの連絡や案内の多くをデジタル化する方向で進めております。このご覧頂いている学会のウェブサイトも2021年10月から全面的に装いを新たなものに致しまして、使い勝手のよい、また現代的な感覚のデザインにしております。学会内に広報情報委員会という委員会を新たに組織して、その委員の皆さんのお力で、とりわけ常葉大学の花家彩子先生のご尽力で短期間の間にこのような見事なサイトにして頂きました。これまでのウェブサイトは、2004年に阪大に事務局が移った時に、摂南大学の瀬戸宏先生が制作して下さったそれまでのサイトを一新しました。当時北翔大学(現在は明治大学)の大林のり子先生に、今も使っているロゴ入りのサイトをデザインして貰いました。その後、2012年にサーバーの移転の必要があり、それを機にもう一度リニューアルしましたが、これも大林先生が担当して下さり、今年まで運用していました。およそ8〜10年ほどのスパンで学会サイトを新たなものにして参りましたが、時代の情報電子化の趨勢を見ればそれもまた自然のことと思われます。

 この間の学会情報の電子化はウェブサイトばかりではなく、他にも幾つか取り組んでおります。ひとつは学会紀要のバックナンバーの電子化です。学会紀要は、演劇研究の最新成果を内外に公開する重要な媒体であるのは論を俟ちませんが、それまでは年に一度の頻度で刊行しておりました。それを15年ほど前、当時の副会長・紀要編集長であった菊川徳之助先生のリーダーシップで年に2度の刊行になり、その後現在までその態勢を維持しております。研究者の皆さんばかりではなく、若い大学院生などの成果発表の機会を確保するという観点からも意味があったと思いますが、紙媒体による公開に加えて今日では電子媒体での公開も求められるようになりました。世界中でも電子媒体での研究論文の検索と活用が格段に増大しており、学会としても対応をしていくべきと考えられました。日本演劇学会では刊行紀要は現在まででおよそ70号を越えた号数を有しておりますが、その総ての電子化をめざし、ほぼ6年間かかりましたが、本年度その総ての紀要の電子化が終了いたしました。ただ、紀要の印刷媒体としての変わらぬ価値や意義は維持することとし、今まで通り年2回の刊行にて会員のお手元には配布をすることとしております。

 また、学会の理事会、総会の報告などは従来「ニューズレター」の形で会員にはお送りしておりましたが、今回のウェブサイトの刷新を機にこれを廃止し、ウェブサイトでの運用に切り替えております。学会のウェブサイトはどなたでも学会員でなくても世界中から見ることができますが、学会からの会員のみへの必要事項の連絡は、サイト内に「マイページ」という会員個人のフォルダを設定することとし、そこに掲載をするようにいたしております。同時に、コミュニティとしての学会のシンボルでありました会員名簿もこの際には廃止し、マイページ内にのみ掲載するという形を取るように致しました。昨今の個人情報の取扱についての議論と状況に鑑み、冊子媒体での刊行を取りやめたわけです。今後は皆さんのお一人お一人がご自身でご自分の「マイページ」にお入り頂き、住所変更その他の名簿変更を行って頂く必要が出て参ります。

 また、学会の入会について、従来の郵送による申込を取りやめたことも大切な変更です。入会のための推薦者はもちろん必要ですが、今までのような署名や押印を省略でき、このウェブサイト上から申込を行えるようになりました。いままで「ニューズレター」にてお伝えしておりました「寄贈図書」なども新しいサイト上にてご覧頂けるようになりましたのに加えて、会員の各種学術的な活動の一端もご案内できるようにしております。年に数回の会員への一斉メールを行う態勢も整え、重要事項の案内もして参りますので、一層充実した研究活動をお進めいただければと存じます。

 このように電子化を進めて参りましたが、これからは日本演劇学会の多彩な活動記録を紙媒体上に公開することはなくなり、すべてこのウェブサイト上に統合されていく形になります。1948年に創設された日本演劇学会は、日本の古典劇や伝統演劇から西欧やアジアなどの海外の演劇の古代から現代までの広い領域を射程にいれております。日本演劇学会はそれらの世界の演劇についての、戦後から今日までの学術的な研究に大きな寄与をして参りました。その記録はこのウェブサイトに集約されております。毎年の大会や研究集会の記録、役員一覧、河竹賞授賞者、分科会の研究会活動記録など、このウェブサイトは学会の活動の重要なアーカイブでもあります。

 現在の演劇状況は、コロナ禍の中で思うに任せず苦しい展開が続いております。演劇研究はこの状況でも、研究そのものが停滞しているという感じはあまりなく、会員の研究成果の論文執筆や出版などは相変わらず活気があり、頼もしく感じますが、国内や国外での調査や研究や研究者の招聘、また国内国外の学会や研究集会などへの参加など、研究交流はやはり制限を受けてしまいました。その代替としてオンラインでの学会活動は行われていますが、そしてその利便性に気付きはしましたが、直接のコミュニケーションに勝るものとは申せないでしょう。学会活動における電子化は、その直接の、国内国外のコミュニケーションを活性化させるためのものと考えるべきで、それ自体を目的とすべきではないと思います。しかし、学会は最新の研究成果の公開の場であると同時に、研究者のコミュニケーションの場を提供することにもその意義のひとつがあるとするなら、そしてその点で今回のこの一連の電子化について、これからの一層充実した研究活動の土台作りを行ったと考えることができるなら、この奇妙な2年間もそんなに悪いことばかりではなかったと思い直すこともできるかも知れません。今後の演劇研究の一層の活性化を願っております。

永田靖(大阪大学)

電子化された紀要は以下のページから

  • 学会コラム「Theatre / Studies」

    以前の学会会報(紙媒体)での「フォーラム」(投稿記事)に該当するような文章、大会、研究集会、その他の集会などの報告記事、あるいは新刊紹介、劇評などの多用途に使うように設けられているものです。

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