2021年度の研究集会を終えて | 日本演劇学会

2021年度の研究集会を終えて

公開日:2022-02-21 / 更新日:2022-05-29

 

岡本淳子(2021年度研究集会・実行委員長)

 2021年12月4日と5日の2日間にわたって研究集会が開催されました。2020年度の研究集会、2021年度の全国大会に続く3度目のオンライン開催です。

 日本演劇学会での大会運営に関わるのは初めてのうえ、大会実行委員長という大それた役をお引き受けすることになり、何から始めればいいのかもわからずに大きな不安がありました。そのときにサポートしてくださったのが会長の永田靖先生です。大阪大学の同僚として支えてくださったわけですが、些末な質問にも即座に返事をくださり、丁寧にご指示くださいました。心より感謝申し上げます。

 そして、企画運営委員会の皆さんにどれだけ助けられたことでしょうか! 初めて聞くSlackというソフトでのやり取りに当初は、「メールでのやり取りではだめなのだろうか?」と思ったりもしたのですが、慣れてくるとそのソフトの便利さが理解できました。メンバー全員がメッセージを読むことができますが、その事柄に関係しているメンバーにだけ通知することができるので他のメンバーを煩わせずにすみますし、時間がない時には絵文字で反応することも可能です。グーグルドライブを共有で使用することに慣れていない私の失敗でご迷惑をおかけした時にも、「ドンマイ」という応援メッセージや絵文字をいただき、本当に心が和みました。ありがとうございました。

 今回、研究集会のオンライン運営に携わって感じたのは、舞台上演に通じるものがあるということです。私は実行委員長として皆様にご挨拶をしたり、シンポジウムで発表をしたりして、いわゆる舞台に上がる役者でありました。と同時に、テクニカルサポートや裏方の仕事もさせていただきました。そして、オンラインの画面上に顔を見せない裏方の皆さんが、どれだけの神経を使ってパソコンに集中し、密に連絡を取り合って最大3つのルームの進行を円滑に進めるべく働いているのかを間近で見ることができました。本番の2日間だけではありません。委員の皆さんは大学の授業や業務で多忙を極める中、準備段階から多くの時間を割いて本番の成功のために尽力してくださいました。優秀な裏方さんがいてこそ、舞台に立つ役者は自分のパフォーマンスに集中できるのです。抜群のチームワークで研究集会という二日間の公演を無事に終わらせてくださった企画運営委員会の皆さんに大きな拍手を送ります。

 さて、オンライン上の舞台に上がった役者さんたちのパフォーマンスはいかがでしたでしょうか。前回の全国大会に引き続き、登壇される皆様には本番の一週間前にプロシーディングを提出していただきました。準備不足で舞台に上がることができないシステムであり、皆様にご協力いただいた結果、大幅な時間超過などもなく円滑な運営ができました。

 今回はパネルが6本、シンポジウムが2本とグループでの発表が多かったのですが、それぞれの発表に連関性はあったでしょうか、パネルあるいはシンポジウム全体としての議論にまで発展させることができたでしょうか? 少なくとも私が参加した「現代スペイン語圏演劇におけるトラウマのドラマ化とVerosimilitud(真実らしさ)の追求」のシンポジウムでは、各発表者の扱った作品に限っては共通点をいくつか見つけることができたものの、スペイン、南米、ラティーノ演劇という三つのエリアの演劇間の影響関係を明らかにすることはできませんでした。フロアーの皆様から質問やコメントをいただき、今後取り組んでいくべき課題に気づかされた次第です。

 私はルーム1に張りついていたため他のルームでの発表を聴いていないのですが、もしかしたら他のパネルなどでも同様の反省があるかもしれません。それは、一つにはこのコロナ禍で、人との交流、つまり対面での雑談も含めた何気ないやり取りが欠如し、各発表者が個々に、孤立して準備を進めた結果なのかもしれません。膝を突き合わせて様々な話ができるように早くなるといいですね。

 そして、最後にもう一つ。今回の研究集会のテーマは「新ドラマの現在」だったのですが、新しいドラマについて十分な議論がなされたとは言えないように思います。<ドラマ>について論じることがいかに難しいのかを改めて感じた集会でもありました。引き続き、皆様と共に<ドラマ>について考えていきたいと思っております。(岡本淳子)

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